東芝がいきなりHD DVDから撤退したことで、どんな人が悲しい思いをしているのでしょう。ちょっと整理すると…
・ユーザー
今日の東芝の発表によると、国内だとプレーヤーは約1万台、レコーダーは約2万台を販売したそうです。これって、少ないですか?多いですかね?東芝の西田社長は先日の発表で「日本は、(販売台数)が少ないですから、端数と言うことで見ていただければよいかと思います」と口を滑らしていました。たしかに全世界では約70万台のプレーヤー(北米60万台、欧州10万台)が売れていたので、それらに比べれば数字は小さいでしょう。
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http://www.phileweb.com/news/d-av/200802/19/20458.html
言葉尻を捉えるわけではありませんが、国内の3万台って、けっこうな数だと思います。HD DVDは、BDに比べて容量が少なく、メディア価格が高いという弱点がありました。そんなHD DVDを“あえて”選んだ人は、それなりに製品への思い入れがあったのではないでしょうか?HD DVD機器を購入した人の損失は本体だけに止まりません。「高画質だから、永久保存版に!」と買ったHD DVDビデオや、録画したメディアなど、本体以外の投資も無駄になりました。
確かに海外の70万台に比べれば3万程度は端数でしょう。録画機は思い出を残す製品です。レコーダーのなかには、それぞれに“ユーザーの思い”が詰まっています。それは1度しか放送しないライブだったり、NHKのど自慢のような番組に出演した、家族や自分の映像かもしれません。そんな貴重な映像をHD DVDに記録した人はこれからどうすればいいでしょう?
VHSとβはコピーが可能だったので、βが無くなっても内容はVHSにダビングして残せました。レーザーディスクもまだプレーヤーを購入することができます。しかし、ハイビジョン番組にはコピーガードがかかっているので、HD DVDに録画した番組はダビングやムーブができません。HD DVD対応機器が壊れたらもう見られないんです。これは6月からスタートする「ダビング10」になっても同じことで、ディスクメディアからのダビングやムーブはできない決まりになっています。
東芝は2008年3月でHD DVD関連の事業を終息させます。すでに店頭からHD DVD機器を撤去する量販店も出てきました。もしかすると3月を待たずに店頭から姿を消すかもしれません。HD DVDディスクに保存したデジタル放送の番組は、いま使っているHD DVDの機器が壊れたら見ることはできなくなります。たしかに生産終了から8年間は修理用の部品が保存されるので、壊れても修理は可能です。しかし期限がきたらおしまいです。
前述のようにデジタル放送にはコピーガードがかかっているので、BDにダビングやムーブもできません。市販ソフトを含め、永久保存版にしたかったコレクションは“期限付きの思い出”になってしまったのです。
これがカジュアルに録画を楽しむユーザーの多くが選ぶメーカーの製品なら、そんなに問題は無かったかもしれません。録画・編集こだわるユーザーを自ら育て、そして、それらの人から熱い支持を集めてきた、RDシリーズを世に送る“東芝”がやったのはマズかった。
HD DVDからの撤退するにしても、あと10年や20年は、プレーヤーだけでもつくり続けるべきでした。たとえ現行機種より性能が落ちて、価格が高くなってもプレイヤーを作り続けていてくれれば、ユーザーの不安は軽くなったと思います。たいへんだろうけど、それが2006年7月にRD-A1を発売してから、撤退を発表した日まで、HD DVDに思い出を託した人たちへの一番のサービスになったはずです。
つづく